オゼノスゲハムシ

オゼノスゲハムシについて問い合わせがあったのでメモ。
オゼノスゲハムシPlateumaris macropenis Nakane (1999: 45) は、著名な甲虫学者である中根猛彦の「遺稿」として昆虫と自然で記載されたネクイハムシである。「幅が広くて立派な交尾器」とされたものは、図をみればすぐわかるが、雌の産卵管そのものであった。その後、Hayashi&Shiyake(2004)により、北海道大学のホロタイプを確認した上で、Plateumaris shirahatai Kimotoのシノニムとして処理された。このような論文が掲載されてしまったことは、残念としか言いようがない。ところで、この論文では、日本のスゲハムシがP. discolorとP. sericeaのどちらに対応するかという重要な指摘も含まれている。この2種はAskevold (1991)によって、同種とみなされており、私もこの見解に従っているが、欧州の研究者の中には同意しない人もいる。実際、形態には違いがみられ、日本のスゲハムシはP. discolorの特徴と一致している。この2種が別種か同種かは欧州で調べるしかない。私たちがDNAを分析した範囲では、2種に分ける証拠はみつかっていない。たくさんの個体をみたわけではないので、片方しか分析していない可能性もなくはない。
文献
Askevold, I. S.(1991)Classification, Reconstructed Phylogeny, and Geographic history of the New World members of Plateumaris Thomson, 1859 (Coleoptera: Chrysomelidae: Donaciinae). Mem. Ent. Soc. Can., 157: 5-175.
Hayashi, M. and S. Shiyake (2004) A check-list of the Japanese Member of Donaciinae (Coleoptera: Chrysomelidae). Entomological Review of Japan, 59(1): 113-125.
中根猛彦(1999)スゲハムシの学名について.昆虫と自然, 34(8): 45-46.