丸山宗利・小松 貴・工藤誠也・島田 拓・木野村恭一(2013)「アリの巣の生きもの図鑑」.東海大学出版会,秦野.
何年前だったか昆虫学会で,おそらく最初の好蟻性昆虫の小集会に参加した.確か東京農大が会場だったと記憶している.ここで,著者の丸山さんが好蟻性昆虫の概説を話したのだが,そのパワポで映写された生態写真の数々がすばらしく,そのまま本にして欲しいと思ったのを覚えている.それが,今回,実現されたのだから,入手しないわけにはいかないのである.
この図鑑はオールカラーの生態写真で構成され,標本写真は一部だけである.アリとそれを取り巻く生きもの達の生態を知っていなければ撮影不可能な写真ばかりであり,特に寄生蜂や寄生蝿の産卵シーンなど,貴重な瞬間を捉えている.とにかくスゴイ.また,解説も簡潔ながら豆知識の宝庫であり,思わずへえ〜を連発してしまった.
この図鑑で初めて寄主のアリが紹介されている種も多く含まれており,また日本産種の目録は調査を行う上で極めて有用である.さらに好白蟻性昆虫も掲載されていて,とても得した気分である.個人的には,日本産種だけを扱っているというのが,すごく良い.なぜならば,外国の珍奇な虫を並べてしまえば,それは遠い世界の話しになってしまう.しかし,実際には,このアリの巣の生きも達は身近な場所にすんでいることに,多くの人は驚きを禁じ得ないだろう.
余談だが,昨年の夏にクロヤマアリの巣をじっと眺めているハエが芝生にいた.アリに関係する種なのかどうかも確認していないが,今回の図鑑にはそらしき種は掲載されていなかった.やっぱり関係ないのか?ちょっと気になっている.