前野ウルド浩太郎(2012)フィールドの生物学9「孤独なバッタが群れるとき」.東海大学出版会./フィールドの話しは少しだけで,屋内でのサバクトビバッタの飼育実験によって相変化のカラクリを解き明かしていく内容だが,実に面白い.著者の虫に対する思い,師とのやりとり,実験方法の創意工夫,定説への挑戦など,おもしろい話しが満載である.公表論文もたくさんあって,業績もすごいと思った.いつか続きのフィールド編が出ることを期待したい.
気になったのは,サバクトビバッタ分類学的な位置づけについて説明がないこと.同じく群生相を示すトノサマバッタと類縁関係がどうなのか,解説がない.これに関して,バッタとイナゴの定義(単なる英訳の問題か?)についても,分類の話しがないので,なんかすっきりしない.私は.前脚の付け根に突起があるのがイナゴだと思っているのだが.
また,最近の北アフリカ情勢も大変気になるところである.この本のおかげでモーリタニア,マリ,アルジェリアの位置関係を理解することができた.遠いところだが,日本や日本人も無関係ではない.