ヒメドロムシの幼虫に興味を持ったきっかけは、ハバビロドロムシ属の幼虫の報告を見たこと。あまりにカッコイイ幼虫だった(全体図のスケッチが良かった)。そして、実は幼虫がほどんど報告されていないことも知った。
ヒメドロは成虫と幼虫の対応は、採集しているとなんとなくわかった。しかし、飼育羽化となれば、それなりに時間がかかる(それも楽しいが)。そこで、分子、今で言うDNAバーコードで対応がつけられないかということで、共同研究が始まった。
ミトコンを調べたところ、いくつかの属はうまく分けられなかったが、大方の属・種で対応がつけられた。このことは2010年のEntomological Scienceで報告した。この論文は分子で成虫幼虫の対応をつけた研究例として、今でもたまに引用され続けている。
この後、核DNAも分析することになり、ちょうどアシナガ・ミヤモトとヨコミゾ・ホソヨコミゾの同種疑惑を調べるついでに、日本産種全般の翅多形もみることになった。これはEur.J. Entに論文が出た。
その後、分析する種を増やして、ミトコン・核の系統樹が出来上がってきた。その過程で、ミゾドロムシ系とツヤドロムシ系の幼虫(Zootaxa)、泳ぐヨコミゾドロムシ幼虫の報告(Ent Sci)、プラストロンの進化(Ent Sci)の報告につながっていった。
しかしながら、系統樹の根本の信頼性は低いままだった。さらに共同研究者が加わり、ヨーロッパや北米の種のサンプルも加えて、超保存性の高い領域で信頼性の高い系統樹が推定できた。この10年、幼虫の形態を詳しく見てきたことが役立ち、系統樹と形態の解析という二本立ての論文が、Systematic Entomologyに掲載される運びとなった。
ヒメドロムシの分子の研究も一区切りつけられたと思うが、色々問題も残っているで、ぼちぼち進めたいと思う。良い共同研究者と協力者に恵まれたおかげである。