共著論文が出ました。
Hayashi, M. , Y. Iwata & H. Yoshitomi (2024) Ochthebius lobatus Pu, 1958 from Japan
(Coleoptera: Hydraenidae). Japanese Journal of Systematic Entomology, 30 (2): 333–335.
日本産セスジダルマガムシに別種が混じっていたので、日本新記録として記録しました。中国や韓国で記録されたO. lobatusに同定されます。合わせてセスジダルマガムシの標本も再検討しました。
本種は上唇に窪みがあることが特徴です。しかし、背面から観察しても見えません。正面方向から観察する必要があります。そのことにちなんでクチカクシダルマガムシという和名を提唱しました。生息環境はセスジダルマとほぼ同じ、流水環境の影響下にあるアオミドロ好きです。
クチカクシは、分布域は限定的で、関東山地北部が中心です。長野県でも確認しました。過去の記録を訂正しなくてはいけない事例は少ないと予想します(再検討した標本のほとんどはセスジダルマだった)。見慣れると体型の違いにも気づくようになります。
本種との出会いは30年前になります。大学の自主ゼミで三波川巡検に行った時、岩石を見ずに虫を採集していました。セスジダルマの上唇が窪むことにずっと違和感があり、それが別種と確信したきっかけは遺伝子解析でした。交尾器の違いに気づいた時は驚きました。
セスジダルマガムシも正面から見ると、上唇の先端は少し窪んでいるので、注意!
交尾器はセスジダルマガムシとは大きく異なる。
クチカクシの分布は黒丸。国内分布が局地的のようです。
追記:
クチカクシダルマ、最初未記載種かと思いました。論文の図に出ている交尾器図と一致しなかったので。O.lobatusのタイプ標本は現存するけど、抜かれた交尾器が行方不明とのこと。そこで、あまり期待していなかったけど、原記載論文をネットで入手しました。すると、交尾器の図はピタリと一致し、上唇がくぼむことも記載がありました。一件落着。